あぐり新聞 5月号
あぐり新聞 5月号をお届けいたします。
読んでいただければ嬉しいです。
あぐり新聞 5月号
皆様へ
5月に入り、日差しも随分強くなってきております。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
松幸農産では冬の間の仕事がきっちり行えたことや、スタッフの
熟練度が年々アップしていることから順調に作業が進んでおります。
3月からの少雨の影響で今年も2日に一度しか水路に水は流れない
ことになってしまいましたが、こう何年も同じような年を経験すると
知恵もついてきてどういう手順や順番で作業を行えばペースを
落とさず予定通り進めていけるかわかるようになってきました。
耕作面積が増えたことが負担になっていないので最高の
スタートが切れたと思っています。
田植えが終ればすぐに夏場に向っての作業が続き、まだまだ
気は抜けませんがまずは無事に第一段階をクリアできそうです。
さて、田植えの真っ最中のある日のこと、取引のある米穀企業
さんから携帯に電話がありました。
曰く、「ある大手の食品会社がお米の契約栽培をしていることを
アピールに使いたい。協力してもらえませんか?」とのことです。
ちょうど一日の作業を終えて、軽トラックで会社に戻る途中でしたので
疲れから頭が回っておらず、よく理解できません。
そのため詳しい話を聞くために後日来ていただく事になりました。
数日後、スーツ姿の数名が見えました。迎える私は泥だらけの
作業着で帽子は脱いだばかりで頭はクシャクシャ。
「失礼だったかな?」と思いつつ、この時ばかりは仕方がないと
自分を納得させます。
名刺交換をして、具体的な話し合いが始まりました。
電話でよく理解できなかっただけあって、お話の最中も実は
なかなか理解できません。
今回の件で関係するのは、松幸農産、取引のあるA社、A社と
業務提携しているB社、B社の顧客の大手企業の子会社(C社)
の4者です。今回来られたのはA社とB社。契約栽培をアピール
したいのはC社です。
事故米の事件以来、お米の業界も「安かろう、悪かろう」が見直され
信頼の置ける仕入先の確保は重要な問題で、かつ国の制度も
農産物のトレサビリティが強化され、出所のしっかりしていない
ものは扱いにくくなります。
その中で、C社はきっちりとした仕入先をアピールするため、良い
生産者がいないかB社に相談し、さらに提携しているA社に相談し
松幸農産に話が回ってきたようです。
ここまではありうる話で別に不思議もありません。
その後が問題でした。
C社いわく
「とりあえず4反くらいを契約圃場ということにしてもらって、C社の
担当者に田植え体験をさせます。その田んぼに「C社契約圃場」の
看板を上げ、C社と松幸農産の名前を列記する。そこで写真を
撮って、産地と共に米作りをする姿をエンドユーザーのアピールに
使いたい。看板はすぐに撤去します」
それを聞いた私は体が硬直しました。つまりは「形だけ契約栽培
をしていることにしてほしい」ということです。
4反分のお米というと32人が一年間に食べるお米の量です。
とても大手企業が扱う量ではありません。「それはできない」と
直感しました。ただ、友好関係にあるA社が持ってきてくれた
話でむげには断りにくい。今後増え続ける農地で生産される
お米の売り先を確保していくことも大切です。
私は出来る限り感情を出さないように応えました。
「言われる意味は理解しました。生産者として私たちは、
一生懸命お米を作って行きたいと思います。同時に作った
お米には責任を持ちたい。私たち松幸農産の名前が出る限りは
どこの誰がいつ食べることになるのか、最後まで知りたいし、それが
責任だと思います。そのことは担保されるのでしょうか。もし
されないなら、このお話は難しいと思います」
おそらく簡単にOKすると考えられていたのでしょうか。その場の
空気が凍りつきました。
全員を見据えて応えたので一人一人のの顔は見ていません。
「これはもしかしたらA社との関係も終わりだな・・でもしかたない
ないよな・・・」そんなことを考えながらその後の話が進みました。
「田植え体験するのはいいですか」「いいですよ」
「では松幸農産の名前なしの看板を上げることは?」
「難しいと思います」
雑談を交えながら、そんなやりとりがあって最終的には
「松幸さんの意向に沿う形でいけるかどうか、再度考えて
見ましょう」ということになりました。
今回は物別れとなりました。
ただ、よくよく聞いてみると、今回の話が持ち上がったのが、
最初にお電話を頂いたとき(数日前)で、今は計画自体がまったく
煮詰まっていないこと。C社としても、生産者と一緒になってお米を
販売したいと真剣に考えていてそこから生まれる付加価値や
差別化に活路を見出したいこと。初めて声をかけたのが
松幸農産なので試行錯誤しながらもどんな形であれ、とりあえず
スタートを切りたかったことなどが解りました。
今は田植えの真っ最中で時間的な余裕もなかったようです。
もう一度、話を持ってきてくれるのか、ここで縁切れなのか、
こればかりはなるようにしかなりません。
私たちというか、私にとって松幸農産の名前は非常に大切です。
ほとんど誰も知らない小さな会社といえども、そこには私の
希望も夢も乗っかっています。
間違ったことはしていませんし、その積み重ねが少しずつ信用に
なって、いつか誇れる生産者になっていくのだと思います。
そんな姿勢を評価していただけることを切に願っています。
生ぬるいことをいってしまったのかも知れません。
でもやっぱり間違っていないと思います。
もし今回の話でくみしやすいと考えられていたなら残念ですし
ちゃんとした生産者として、まず一番に思い出してくれたのなら
嬉しい。たださすがにそんなことは聞けませんでした。
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