あぐり新聞3月号をお届けいたします。
読んでいただけましたら嬉しいです。
あぐり新聞 3月号
3月に入り、春の足跡が聞こえてきました。
皆様にはいかがお過ごしでしょうか。冬の間にきれいに刈り取った
畦から雑草が生えるようになり、少しずつ大地が目を覚まし始めて
います。吹く風も乾いた西風から少し湿度のある東南の風へ変化
していき、暖かい日も増えてきました。
また今年も必死で働く田植えに季節が目前です。
先月号で今年は準備が順調に進んでいるとお伝えしましたが
やはり3月になると「あれも、これも」とやることがいっぱいで
気が急いてきます。
苗作りが始まりますし、ビニールハウスを建てたり、全部の
田起し、ケツ板の取り付け、壊れた井戸の修理に、降り口の
土盛りなど考え始めたらクラクラします。
でも、もう待ったなしの時期に入りました。
一つ一つの小さな作業に積み重ねが全て秋の収穫に関わって
きます。全員一丸となって田植えに向って今から走り出します。
さて、先日いつも通り仕事をしていると、真剣な面持ちの父が
私を呼び止めます。「どうしたん?」と聞いてみると
「丈輔、イシバさんに手紙を出そう!イシバさんに!」と言います。
そんなことわざわざ言ってくれなくても勝手に出してくれれば
いいじゃないかと思いつつも、そんな友人がいたかなと思い
「どのイシバさん?」と聞き返してみました。
「イシバさんって言ったら農水大臣の石破さんしかいないだろ!」
と理解できない私に少し苛立ちながら返ってきました。
「え?知り合い?」と一瞬困惑してしてしまった私に父が
まくしたてます。
曰く、「新聞に新しい減反政策のことが書かれていた。減反に
参加するかどうか農家に選択させようとしている。そして参加
してくれた農家には交付金を支給する方向だがそれは間違って
いる。離農した農家や、もう辞めたいと思っている生産者を
応援しても意味はない。石破さんに松幸農産にきてもらって
現実を知ってもらおう。頑張っている生産者もいることを知って
もらいたい」石破さんなら解ってくれるのではないかと思った
そうです。
もうすでに現役で働いておられる生産者は本当に少なくなりました。
近所で70軒くらいある在所で話をしていましたらもう米づくりの
全てを自分で行える生産者は5軒だけだと言います。
ほとんど離農されているか、新しい機械を買わずに「壊れたら
辞めよう」と考えておられる引退予備軍ばかりです。
大多数のそういった方々に減反に参加することで得られる交付金
はおそらく非常に魅力的に写るでしょう。
しかし、その先にあるのは、先細る農業を更に弱くして衰退して
いくばかりの未来。国際競争に敗れ、国土を保全できず、日本の
食糧を確保できず、それでも誰のためかよくわからない「米価」を
守り続ける、そんな姿勢です。そういうことはそろそろやめなければ
ならない。次世代に引き継いでいく未来はもっと夢のあるもので
あってほしい。農業にはまだまだ大きな可能性がある。
手紙には父の「力強い農業を育てていこう」という考えがとうとうと
書かれていました。今、農業後継者として米作りをする身になって
私には父の想いがよくわかります。
もともと農家でなかったため今まで多くの批判に晒されてきました。
「お前は農家を惑わすものだ」と行政に切り捨てられ「松幸農産には
関わるな」と農協からお達しが出たりしてずっと叩かれてきました。
行政や農協の松幸農産に対する姿勢は基本的に今も変わりません。
それでも「なにくそ!」と誰も見向きもしない荒地を開墾しながら
また少しずつ地域の理解を得ながら26年経ってようやく今に
姿があります。
26年経って120町歩を耕作する地域最大の「元気な」生産者となりました。誰も助けてくれなかった厳しい道のりが生産者を育て、安易な
交付金による需給調整が結果農業をおかしくしてしまう。
なぜ、一生懸命な生産者を見てくれないのか、やる気のある農家に
冷たいのか。国として是非、力強い農業を育ててほしいという切実な
想いからどうしても石破大臣に伝えたかったのです。
読み終えて私自身も同じ気持ちでやはり伝えたい、手紙に書かれた
内容こそが現実でした。
2月中旬に石破農水大臣宛に実際に手紙を出しました。
下旬にはまだお返事を頂いておりません。
「馬鹿なことを・・・」と一蹴されたのかも知れませんし、お時間が
取れないのかも知れません。こういった手紙を読んで頂ける
ものでしょうか。でもいつか本当の想いが通じたら大臣自らが来て
いただけるかも知れませんし、そうなればきっと時間いっぱいまで
話して日本の農業が進むべき道を語り合い、その現場との対話が
農業の発展に向けた大きな方針に繋がるのだと思います。
今回の手紙は少し突飛な行動に感じられるこも知れないのですが
いつか大きな山が動く一歩になればと心から願っています。
(いつも父の行動力には頭が下がります)
農業生産法人 松幸農産
代表 松田 丈輔
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