2019年12月 2日 (月)

あぐり新聞 2019年12月号

皆様へ

 

 今年もいよいよ年の瀬です。皆様いかがお過ごしでしょうか。

本年、令和元年の天皇陛下の代替わりで、本当に多くの「お米」に関わる様々な行事が行われておりました。あらためて日本が瑞穂の国であり、農業を基本に置いていることが理解できて、農業を生業とするものとして嬉しく誇らしく感じておりました。令和に入って初めての年末年始、そしてこれからも平穏な日々が続くことを、また日本の農業が豊かな国をつないでいける一助になることを願っております。

 

 

 さて、先日ミーティングでのこと。増えていく農地をどうしたら耕作し続けることができるのか。そんなことを一生懸命話していました。「気合い」や「やる気」があることは良いのですが、それだけでは絶対に乗り越えられない壁があります。今年の田植えでは、過去最大の耕作面積を何とか乗り切ってきましたが、思った通りにいかないもどかしさや、それを原因にするピリピリ感があって、この辺りが限界ではないのかと思うことが何度もありました。更に来年の耕作面積が増えてしまえば、このままでは現場が崩壊してしまいます。農業用水の通水期間に制約があるので、期間を延ばすこともできません。「どうしようか?」あれこれと考えて一つ検討してみようとなった話があります。それは「スマート農業」。具体的には「ドローン」などの最新式技術の導入です。

 

 

 「ドローンがすごい!」らしいです。では、それが一体どの程度のものなのか一度見てこようということで展示会を訪問することになりました。

 農業用のドローンは、大きさが約2メートル四方の幅があり、高さは50センチくらいです。玩具屋さんに売っているものと比べると随分大きく見えます。重さが12㎏。大型の農業機械を見慣れている私たちにとって何とも頼りなく、それこそ「おもちゃ」に見えてしまいます。ドローンと同じ作業をするトラクターが、全長5メートル、高さ3メートル、重さが2トンあるので、その差がお分かり頂けるでしょうか。もはや異次元の世界です。

 

 半信半疑になりながら、どれほどのものか聞いてみました。サイズが小さいので軽トラックで運べます。重さも12㎏なので、女性でも大丈夫。また作業効率は従来のトラクターと全く同じ面積を1台で進めることもできる。「これはすごいな」と素直に思いました。従来であれば、大型トラクターを大型トラックで運んで、少し離れた空き地に駐車して、ノロノロ歩いて田んぼへ向かいました。それがこれなら、スッと田んぼに横付けして作業を開始することができます。また、大型の農業機械は男性陣の仕事になっていて何となく男性優位な感じで働いていましたが、これなら女性陣も男性陣と何ら変わらない作業実績を上げることができるということになります。操作に関しても、ラジコンのように操縦技術が必要なわけでもなく、自動で作業自体は行ってしまいます。これはすごい。

 

 ただ問題もあります。作業に入る前に、ドローンがどこからどこまで作業すれば良いのか設定する必要があることです。ドローンを飛ばす前に、リモコンを持って田んぼの周囲を歩き、四角い田んぼなら四隅に行って、その場でボタンをぽちっと押す必要があります。1,000枚以上の田んぼを歩いて、ボタンを押す労力がどれほどかかるか分かりませんが、一度設定すると、次回からは記憶されているから不要だそうです。最初は大変だけど、毎年草刈りだけで3周は全部の田んぼを歩いているので何とかなる範囲でしょう。

 

 これはぜひ導入したいと思い、「で、これはいくらなの?」と聞いてみました。すると、「昔よりグッとお安くなりました。驚かないでください。何と250万円です!」と言われます。「はぁ?」が私の答えです。すごい性能ですが、おもちゃみたいなドローンが車1台と同じ値段です。軽トラなら2台買ってもおつりが来ます。「高すぎるでしょう?」と言ってやりましたが、いろいろともっともな理由を言われて言い返せません。「検討します...」とだけ答えて帰ってきました。「最新式をいいことに調子に乗っていないのか?」「足元を見ているのでないのか?」そんな苛立ちを拭い去ることができませんでした。

 

 「でも...」と思います。「もう導入するしかないのでは」と思いました。水稲農業の世界では、何年にもわたって随分と効率化が図られてきました。農業機械が大型化し、また高速化して作業効率をどんどんと上げ、昔では考えられないほどの面積を耕作できるようになっています。思い起こしても、私が就農した当時と比べその変化は劇的で、もはや昔の機械サイズやスピードでは、今の半分も作れないのではないかと思うほどです。しかし一方で、こうした大型化や高速化も限界にきているのも事実です。これ以上機械が大きく速くなれば、大きすぎて一般道路を走れないし、速すぎて作業自体の危険度が増します。更に働く人の問題もあります。そもそも日本中が人手不足なのに、農業現場は更に深刻な人手不足に見舞われています。この状況では、大型化、高速化ではなくて、もう「自動化」するしかない。これは時代の当然の帰結と言えるでしょう。

 

 もしそうであるなら、未来の農業現場は今とは全く違ったものになるのでしょう。今のように汗水流して農作業を行うことが伝統文化や職人芸のようになって「文化遺産」の扱いになる。また離農されたおじいさんから聞く昔の苦労話を、いつの日か私がするのかもしれません。牛馬での耕作を語るように、朝から晩までトラクターを動かした日々を回想するのかもしれません。そんな未来が悲しくはないですが、ただ少し寂しくは感じます。

 

 だけど時代はその方向に走り出してしまいました。もう後には戻りません。農業の意義はそのままに、ただ農業の形が変わるだけです。どこまで農業技術が進化するのか分かりませんが驚くべきスピードで進んでいくのでしょう。きっと最新技術で若者が農業を担い、少ない人数できっちりと農地が管理され、多種多様な作物が国内で十分に賄えるようになる。後世に豊かな時代を引き継いでいけると思います。そこから開かれる未来はきっと明るいものに違いありません。今より安定的に農業を続けていけるからです。

 

 「いよいよドローンか?」「やってみようじゃないの!」そう考えています。ドローンパイロットは20代の若手女性スタッフ2名で決定。次世代に向かって、松幸農産でも「スマート農業」始めます!(今年か来年に!)

 

農業生産法人 松幸農産

代表 松田丈輔

 

お餅について

 手作りで生産量が多くないものですから、年末はご注文をお受けできないことあります。できましたら、お早目のご注文をお願いします。

 

年末年始のお休み

 1229日(日)~16日(日)の間はお休みとさせていただきます。日曜日の加減で例年より期間が長くなり、ご不便をおかけしますがご理解賜りますよう宜しくお願いします。

 

耕作面積の拡大について

 収穫後、耕作を依頼される方が激増し、耕作面積が過去に例のないほど増えることになりました。ここまで来ると危機的状態で、何とするか頭を悩ませています。圧倒的に人手が足りないので従業員を募集することになりました。この件はまたご報告させて頂きます。

 

 

 

 

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あぐり新聞 2019年11月号

皆様へ

 

 すっかり秋も深まって冬を感じるようになりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

皆様に苦しくも価格の改定をお願いして今月からご迷惑をおかけすることになっております。今この文章を読んでいただいている方々からはきっと一定のご理解を頂けたのかと推察しておりますが、皆様に喜んでいただける話でもありませんので、どうしても重い感情をぬぐえずにおります。そんな中にあって、多くの皆様から応援のお言葉や励ましのお言葉、心温まるお手紙を頂きました。こんな私たちであっても、支えて下さる方々がいることを改めて思い至り、感謝の言葉もありません。こうして応援して下さる方々がいることが何よりの励みです。

 私たちの行う農業生産が、少しでも皆様の生きる糧になれることを願い、また心して自分たちのやるべきことを忘れずに、これからもお米作りに取り組んでいこうと思っております。今後とも長くお付き合いいただけますことを宜しくお願い致します。

 

 

 さて、収穫が終わって悩みに悩んでいるところ、ある電話がかかってきました。「田んぼの件ですぐに会いたい」との内容です。田んぼの耕作の依頼であることは分かりました。ただ、まだまだ忙しい盛りだったので、「あまり急ぎませんよね、いつ頃会いましょうか?」と答えました。収穫後の状況はどこも似たり寄ったりで、すぐに取り掛かる仕事もたくさんある時期ですし、来年の耕作まではまだまだ時間もあります。「すぐ~」ではなく、少し待ってもらいたいのが本音でした。ご理解いただけると思ったのですが、予想した返答ではありません。「いや、すぐに話をしたい~」「あ~、そうですか…」とにかく翌朝一番に会う事にしました。

 

 翌朝来られたのは70歳くらいの浅黒く日焼けした人です。温和な全く嫌味のない感じの人でした。「俺の作っている田んぼを引き受けてほしい」そう言われます。離農される方からの耕作依頼は季節がらよくあることです。いつも通り対応しようとしたら続きがありました。おもむろに田んぼの地図を取り出して、こう続きます。「俺の作っている田んぼの全部を引き受けてほしい、俺が借り受けている田んぼも全て頼む」と。よく見ると、地図の半分くらいが赤くマークされていて、一目見てまとまった面積であることが分かりました。地区内の農地を取りまとめて耕作する、「集落の担い手」の方だったのです。

 

 地域の担い手は、基本的に自分の住む集落とその周辺しか耕作することはありません。定年退職されて第2のキャリアとして農業を始めた人が多く年齢的にも若くありません。ご夫婦で農業をする家族経営で完全に専業農家です。

 

 今回は、その集落の担い手さんからの依頼でした。そこでまたしても悩みに悩みます。いつもなら、「ドンと来い!」よろしく、一発で引き受けてきました。遅かれ早かれ耕作面積は増えていき、自分たちが作ることになる覚悟はしていたからです。ただ、今年は不作の影響もあって波風を立てたくない。何とか現状を維持し、少しは面積が増えるにせよ、次の年をどう乗り切るか、しか考えられなかったのです。ただ一方で、広域で耕作する私たちとしては、それほど遠くない地域をまとまって耕作できるのはまたとないチャンスでもありました。

 

「まずは理由があるのか聞いてみよう。」もしかしたら、今年全部借りる必要が無いかもしれない。そんな思いもあって理由を聞いてみました。すると、「俺はまだまだ作りたいのだけれど、妻が病気になって農業どころではなくなった」と答えられます。「トラクターも買ったばかりだけど、それより妻の面倒を見なくてはならない」と。それはそうだと思います。でも、その地域には他にも大きな地域の担い手がいるのも知っています。それについては、「そちらも手一杯のようだし、何か言うとケンカ腰になるので頼みたくない」とのこと。よく分からないけど、地域には地域の事情があると勝手に理解しました。「でも、なかには地域に貸したい人もいるでしょう。」と未練がましく聞いてみると、「いや、もう全員に了解は取り付けてあるんだ」と言われます。ああ、もう他の選択肢を無くして、ゼロか100かを迫ってきている。これを断れば地域農業の担い手を標榜する松幸農産としては無責任な対応になってしまう。また、そもそも自分たちの存在意義を自ら捨てることになってしまう。本当は、今年は待ってほしいというのが本音ですが、やらねばならぬと思いました。それでこう答えました。「1日、待ってください」と。即決すれば良さそうなものですが、そうしませんでした。この話を引き受けるについては、スタッフみんなの理解が必要です。どう考えても、ただでさえ多忙を極めている現状で、そこに更に業務を追うことになるのは他ならぬ松幸農産のスタッフだからです。自分は良いにせよ、みんなが納得してくれないことには話になりません。

 

この方が帰った後で、現場に行って話をしました。みんな一様に「ぐっ!?」と押し黙りましたが、次には「どうすれば対処できるか」の話に切り替わりました。誰も「嫌だ」と言いません。作り続けていくことに後ろを向くことはありませんでした。そんなスタッフの姿が誇らしくもあり、うれしく思います。結局、松幸農産で引き受けることになりました。令和1年産の不作を引きずりながら、大幅な耕作面積増を乗り切っていく、あとはその覚悟の問題です。

 

「しかし」です。ここまで来たかと思うのです。今まで担ってくれていた地域人材も枯渇して、全ての農地を引き受けることができないところまで来てしまったのだと思います。今回は良かったとしても、次も大丈夫とは言い切れません。実際に、次に引退を考えている人も知っています。同じく相当の面積を作っています。それをどうするかの答えは誰も持っていません。「機械を投資して、人を雇って~」とうまく行けば良いのですが、機械はお金を払って装備できたとしても、それを動かす人はどうにもなりません。AIが進歩して無人で行えるようになるまで、それほどの猶予もありませんし、そもそもイネと言う生き物を、制御できない天候下で育てていくには、「人の関与」は欠かせません。今は、農業が新たな産業として再注目されていますが、まだまだ道半ばです。願わくば、作る人がいなくなる前に、もっと魅力ある産業にしていかなくてはならない、そう思います。厳しくとも、本当にやりがいのある仕事ですから。

 

 

農業生産法人 松幸農産

代表 松田丈輔

 

 

 

 

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2019年9月30日 (月)

あぐり新聞 2019年10月号

みなさまへ

 

大切なお願いです。どうかご一読ください。

 

 松幸農産では9月の下旬に収穫を終えました。これほどまでに苦しい稲刈りを経験したことはありません。辛いお願いをしなくてはなりません。皆様にお届けするお米の値上げをお願いしたいと思います。つきましては状況を説明したいと思います。

 

 815日にやってきた台風10号は、今年の収穫に甚大な被害を与えました。収穫直前に押し迫ってくるような強風と、押しつぶすような大雨で、半分以上の稲穂が倒伏しました。すぐに刈り取りを始めましたが、通常の倍以上の時間がかかることが分かりました。何とか作業を急ごうとするのですが、ぬかるんだ田面と倒伏した稲穂では、どれほど頑張ってもいつものようにはいきません。「夜遅くなっても刈り続けましょう」と従業員みんなが言ってくれて泣きそうになりながら、同じように何とかしようとしてくれることが嬉しくもあって、とにかく気持ちは前に進もうとするのです。でも、どれほど頑張ってもなかなか進んで行きません。

 

そのため、通常は3台のコンバインで行うところを4台目のコンバインを使うことにしました。このコンバインは、導入から年数が経って故障も多く、退役が近いコンバインです。新しいコンバインの代車の位置づけで、現役のコンバインが修理に入っても、止まらず収穫が続けられるように予備として置いてありました。それを使うことにしたのです。ただ問題もあります。コンバインは3台が基本ですので、乗り手も3人しかいません。4人目はどうするのかという問題です。ただでさえ操作の難しい大型コンバインを、ぬかるみ、倒伏した最悪の条件で行わなくてはなりません。勤続年数が長い人ほど自分の専門業務が決まっているので、何とか対処できそうなのは最も若い従業員の一人でした。退役前の古いコンバインと若い従業員。コンバインが駄目になってしまうことは仕方がないにしても、大きな事故にならないか心配でたまりませんでした。判断が間違っていないか何度も自問しても同じ答えしかありません。今、この方法で少しでも進まなければ、助かる稲も助からなくなる。ひどい条件の中でも、まだましな、リスクの少ない田んぼを選びながらでも、彼が作業を進めてくれれば、遅れを取り戻すことができる。祈るような気持ちで送り出しました。これが収穫開始3日目のことです。

 

収穫が始まってから同じく祈るような気持ちで晴れの天候を願っていました。台風で必要以上にぬかるんだ田面が少しでも乾いてほしかったのです。ただ、こちらも思うようにいきません。天候が安定せず、曇りで急いで田んぼに行っても、途中から雨が降って帰ってくる日が何日もありました。せっかく遅くまでやろうとしてもどうすることもできない。そして、ぬかるみは続いて作業を進めさせてもくれません。また少しの雨でも倒れ始めた稲穂を更に押さえ続けることに十分で、更に倒伏が進んで状況は悪化するばかりでした。

 

そんな悪条件の中で、コンバインでの収穫作業は続きました。風の向きに従って、一方方向に倒れてしまった稲穂が田面一帯に広がっています。稲穂が直立していれば、どの方向からでも刈り取りができますが、倒れてしまうと風上方向からしか刈り取ることができません。1辺100メートルの田を1回直進すると、バックで元の位置に戻り、2回目の直進をするといった具合です。また、ぬかるんでコンバインの車体が沈むと、どうしても泥を巻き込んでしまいます。すると、コンバインの駆動部が稲穂と泥でつまってしまい動けなくなってしまいます。一度止まるとエンジンを止めて、つまった稲穂を一本一本、手で引き抜いて動けるようにしなくてはなりません。少し進んでつまり、稲穂を引き抜いて、また少し進んで、再びつまるの繰り返しです。本当に果てしない作業でした。

 

こうして何とか前に進み、何とか刈り取れそうな田んぼを全て刈り取った段階で6割程度の進捗でした。そこから更に無理をすれば刈り取りができそうな田んぼの収穫を続けました。そういった田んぼは全てを刈り取れるわけではなく、刈り取れそうな部分だけを刈り取るだけです。本来刈り取るべき多くの稲穂を踏み潰して、刈り取れる部分だけを刈り取るのです。心が痛くて泣きそうになりながら、その僅かを拾い続けました。何のために、いったい何を自分たちがしているのか分からなくなって、でもそれしか方法も分からなくて、進め続けました。食べ物を作る自分たちが、食べ物の大切さを一番感じている私たちが、食べ物を踏み潰す。大切に育ててきたのに、1年かけて頑張ったのに、残酷すぎることでした。

 

最後の最後まで頑張りましたが、もうこれ以上刈り取るところがないと判断し、収穫作業をやめました。「終わった」のではなく、「やめた」が言葉として近いのだと思います。収穫期間の1か月、一日も休むことなく作業をして、何とか終わらせようとしましたができませんでした。最終的な刈り取りの収量は、予定していた7割程度です。本当に忸怩たる思いです。

 

私は、学生時代から親の農業を手伝ってきているので、すでに30年あまり刈り取りを行ってきました。振り返っても、ここまで被害が出たことはないし、予想もしておりませんでした。ありえないことが起こってしまった。その現実をまだ受け切れていません。

 

私たちはお米を作り続けていきたいと思っています。「こんなことがあるなら、もうやめてしまいたい」とも思います。正直に考えて、どっちなのかと聞かれれば、やはり作り続けていきたい。自分達の生活もありますが、何より誰かが農業を続けていかなくてはならないと思うからです。今年の被害は、私たちだけではなくて、この地域の方々も同じように被害を受けました。これを機に離農される方の耕作依頼が一気に増えました。どうしてもこの現状を乗り切りたい。そう思っています。

 

そのため、皆様にお届けするお米の価格を上げさせて頂きたいと思っています。当初決めた価格をシーズン途中に変更することは初めてのことです。こんなことをお願いすることになることも、今まで考えたこともありませんでした。これを機に、離れていかれる方もいるかもしれません。すごく怖いことですし辛いことです。でもどうか助けて頂きたい。乗り切る次の収穫までの1年間、一部を負担して頂けないでしょうか。

 

全部のことが苦しくて苦しくてたまりません。どうかお許しいただけますよう宜しくお願い致します。

 

農業生産法人 松幸農産

代表 松田丈輔

 

追伸:

 

あまりに急な事なので、11月発送分からのお願いにしたいと思います。10月中は今までの価格のままですので10月中のご注文をお願いします。新しい価格については、別紙の価格表をご確認ください。

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2019年8月29日 (木)

あぐり新聞 2019年9月号

 

暑さもどうやら峠を越えて、秋風を感じる季節に入りました。

皆様いかがお過ごしでしょうか

 

 田んぼを見渡すといつの間にか一面の黄金色です。一昔前なら、小型のコンバインがたくさん走っていましたが、最近はコンバインの数は減って、逆に大型のコンバインがチラホラと動いている風景に変わりました。時代とともに、見える景色もだんだんと変わりつつあり、お米を作る人が減っていく様は少しさびしくもあります。でも、だからこそ自分たちの出番だと気が引き締まる思いにもなります。風景が変わっても、生きていくために農業を行うのは大切なこと。その思いを忘れずにずっとお米を作ってきました。雨の降らなかった冬、暑かった春、長引いた梅雨、遅く来た夏と、今年もいろいろありましたが、何とかこの季節を迎えることができました。令和最初の収穫がいよいよ始まります。

 

 さて、しかし新時代の冒頭から「理不尽」としか思えません。「何なんだこれは?」と考えてみても、いつものように答えはありません。穂が色づき、収穫まであと10日。そんな矢先に襲ってきたのが台風10号です。四国・九州を間を北上し、私たちの三重県を長時間にわたり暴風雨に巻き込みました。

 

 初めから「まずいな」と思っていたのです。過去20年以上この仕事をしてきて、ここまで収穫直前に台風が来ることはありませんでした。大抵の台風は秋に起こるものだから、収穫がある程度進んだ段階で被害を受けることになる、というのが私たちの認識です。収穫時期に台風の予想が出ると、何とか早く収穫を進めようと必死になって走り回っているのが、いつものパターンです。実際、昨年も台風により大きな被害を受けましたが、それは残り数日に迫った最終段階での話。ほとんど収穫が終わった後なので、台風後の田んぼの収穫はほぼできなくなってしまいましたが、それでも収穫自体はほぼ無事に終わったと思えたのです。それがこの時期とは?

 

 非常にゆっくりと今夏の台風は進みました。海上で発達し、大きな雲を引き連れてきました。当初は関東の南にいたので、こちらに進まないと思っていたら、どんどん西へ西へと移動し、結局は四国・九州を縦断することになりました。雨の量は実に1,000ミリ以上の予想。大きな雨雲は確実に私たちのほうに向かってきました。何ともいえず生暖かい空気の流れ、息が詰まるような重苦しい不穏な空気です。そして、そのまま暴風雨がやってきました。「風が吹く」というシャープな表現は似合いません。「重たい空気が押し迫ってくる」ようでした。そこに「押し潰すような雨」が加わります。収穫直前に、ほとんど直撃のような台風が来てしまったのです。

 

 台風一過の朝、田んぼを見回りました。幸いなことに、稲穂が水に沈んでいるような事態は免れていました。ただ、倒伏がひどい田んぼが数多くある。それも収穫直前の田んぼではなく、まだ3週間ほどかかりそうな田んぼでも倒れてしまっています。何とかなりそうな田んぼから、これは難しいと思える田んぼまで多種多様ですが、どういった条件となろうとも収穫は進めなくてはなりません。台風が来てしまって、傷ついた田んぼがある。その現実をそのまま受け止めて、そして私たちは対応するしかありません。ほとんど全員が同じことを考えていました。つまり、「すぐに刈り取りを始める」です。頭を垂れて、見事に実った穂は、その重さ故に再び立ち上がることはありません。すぐに動かねば助かるものも助かりません。倒れた稲穂を刈り取るには、通常の倍の時間がかかります。適期を逃しかねないし、品質に悪影響が出かねない。最速で準備に入りました。

 

 まずは田の水抜きです。倒れた稲穂を刈るには地面が乾いている必要があります。また優先順位を決めるべく5段階のレベルに分けて、刈り取る順番を決めていきます。車で走り回って通常の倍以上のスピードで行いました。お盆休み明けに最終調整しようとしていたコンバインや乾燥機の調整を同時に行って無理やりに体制を整えました。搬送用のダンプカーを借りてすぐに、その足で収穫に向かいました。コンバインが轟音をあげながら、でも非常にゆっくりと慎重に作業を進めます。次の雨が来ないことを祈りながら、でもそれが難しいことを理解しながら作業を続けています。このお便りを皆様が手に取るときに、きっと難しい顔をしながら、でも希望は失いたくないと願いながら私たちは収穫作業を進めています。自信はなくとも、もうやるしかありません。やり切れるでしょうか?

 

 しかし、何と「理不尽」なことかと思うのです。1年間頑張ってきて、最後の最後に試練に直面してしまいました。「これが農業だから仕方がない」、そう思いたいのですが言葉だけでは納得できるものでもありません。誰か何かを恨みたくとも、その対象も見当たりません。ただただ「理不尽」だと思うばかりです。

 

だけど、どれほど理不尽でも立ち止まることはなく進むしかないのです。これはもう「戦い」です。自分自身に対してでもないし、自然に対してでもない。何に対してか知らないけれど、戦うしかありません。勝ち負けも関係なく戦うだけです。

 

誰かがいつか言った言葉を思い出しました。「物事は、勝つか負けるかではなく、勝つか学ぶかだ」と。打ち勝てるだろうか。でも学び取ることもあるでしょう。波乱含みの今年の収穫が進んでいます。

 

 

農業生産法人 松幸農産

代表 松田丈輔

 

 イナゴが多いような?

 

 今年の田んぼを見ていると、稲の葉っぱが途中で切れている田んぼを見かけます。不審に思いよくよく近寄ってみると、イナゴが一斉に飛び立ちます。どうやらイナゴに食べられているようです。この季節にはよく見かけるイナゴですが、これほど多い年は見たことがありません。捕まえることができれば佃煮にして、「松幸米で育ったイナゴの佃煮」として販売したいところですが、そもそも捕まえ方が分かりません。イナゴの佃煮が一般的な長野県ではどうしているのでしょう?虫網でしょうか?誘引するのでしょうか?

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あぐり新聞 2019年8月号

 

皆様へ

 

 ようやく夏がやってきました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

7月のあぐり新聞の冒頭に書きましたように「暑さに耐える夏が来る」と半分くらいは思っていたのですが完全に裏切られてしまいました。いつまでも梅雨が続いてスッキリと晴れず、7月末になってようやくの梅雨明けです。テレビではプールの来場者数が前年比95%ダウンなんて信じられないようなニュースが流れて、「昨年の涼感グッズを買いまくっていたのは何だったのか?」と、あきれるばかりです。またこのような天気になったのは、日本中からお米が無くなった平成5年の「米騒動」以来のことらしく、お米を作っている生産者としては本当に冷や汗ものです。7月末現在で、ようやくセミの声が響き渡り、強い日差しに目を細めながら夏を感じるまでになりました。気づけばすでに8月で、収穫まで指折り数える時期に来ております。最後の最後にどのような1年で終えることができるのか、こればかりは「神のみぞ知る」ですが、この1年で積み上げてきたものを取りこぼさないように、万全の態勢で臨みたいと思っています。

 

さて、コメ作りにおいて、自然と人力を比率で考えると、あくまで個人的な感覚ですが、「自然7:人力3」の比率になるのではないでしょうか。日照不足、冷夏、酷暑、少雨といった影響を受けながらも、稲は大地に根を張り自然と育っていくものです。一方、育苗、田植え、土壌改良、管理といった部分は人間が担っていて、生育環境の整備を通じて植物の最適化を行っています。この「自然7:人力3」の勝手な法則に従うと、どうしても何か思った通りにいかないと自然のせいにしてしまうものですが、これは生産者の性とも言うべきもので、分かっていてもどうしようもありません。ただそれでも、「3」は人間が担っているのですから、ここに力を入れることが生産者の役割でもあります。

 

でももしかしたら、「自然7」ではなく、「自然9」と考えられる方もいるかもしれません。「ほとんど自然のおかげでしょ」と。確かに水も空気も土も太陽も、人間が作ったわけでもなく、それらは与えられているものです。種子を工場で作るわけでもないし、生育も空気で膨らませて大きくするわけでもありません。稲の自然な生育活動によって大きくなるものです。もともとそこにあるものに対して、人間は少しの影響力を行使しているだけで、実際に農業生産を行う私たちですら、「生命ってすごいな」とか「自然ってありがたいな」と思うこともしばしばです。「ほとんどが自然に行われていることである」と言われれば、それはその通りだと思います。

 

それでも人間が食べるお米を育てていくには本当に多くの手順や気遣い、困難や対処がついて回ります。実際にお米の生産に従事している私たち生産者としては、やはり「3」くらいは関わらせてもらっていると信じたいのです。例えば冬の間に行う土壌改良は、元気に健康に育って行ける生育環境を整える取り組みです。土壌に必要な養分をきちんと準備したり、微生物や植物が生きていきやすい環境を作り出すことができます。また、少し前の落水では、土壌に酸素を送り根を活性化させることができますし、不要なガスの発生を抑えることもできます。他にも圃場の水を入れ替えることで、水をきれいな状態に戻したり、朝の冷たい水を入れることで夏の暑さを乗り切る手助けになります。畔の草刈りも地味な仕事ですが、害虫が集まることを抑えたり、空気の流れを作って病気の発生を抑えることに有効です。「名もなき家事」が日常生活を支えてくれているように、農業にも数えきれないほどの「名もなき農作業」があったりして、それら全てを足して行けば、「人力3」くらいはある。そして、その努力を積み重ねていくのが生産者の仕事であり役割であると考えています。山に分け入って山菜を採取してくることと違う、「人力3」があるが故に「農業」なのです。

 

今年もこの8月に至るまで、月末から始まる収穫まで一生懸命頑張ってきました。人手不足でも手落ちがないように、梅雨が長くても順調に生育できるように、できうる限りの「人力3」を実践してきました。今現在この文章を書いている7月末、外は台風で大荒れで、「自然7」が逆の脅威として起こっているけれど、努力があるからこそ乗り切ってくれると信じたい。例え僅かでも、自分たちも協力してお米はより良い成長を遂げてきたと信じたい。そんな心境でいます。

 

さあ泣いても笑っても、もう収穫です。振り返れば、今年もいろいろなことがありました。それら全てを乗り越えて今日があります。今年のお米はどうでしょうか。お届けする今年のお米が、食べる人の健康や元気、笑顔の源になってくれるでしょうか。収穫まで数えるほどの日数しかありませんが、最後の最後まで全力で駆け抜けていきたいと思います。

 

農業生産法人 松幸農産

代表 松田丈輔

 

 

肥料メーカーとの生育確認

 

 近年の暑すぎる夏への対処として、今年は3種類の肥料を使って肥料メーカーと実証実験を行ってきました。どれも現状では順調に育っているのですが、残念なことにこの夏は低温で昨年と全く違う環境です。農業の世界は何かに取り組むにしても1年で結果が分かるわけではありませんので、それはそれで仕方のないことですが、あまりの違いに少しがっかりです。来年再びやり直します。

 

新米の出荷について

 

 今年は日照が少なく低温であったため、新米の出荷が遅れることがあります。大幅な遅れにはならないと考えておりますが、少し待っていただくことになるかもしれません。月末が近づきましたら、お電話にてお問い合わせください。

 

カメムシの発生原因

 

 「カメムシ」はご存知ですか。あの触ると異臭を放つ緑色の昆虫です。夏の網戸に引っ付いていますよね。お米作りにおけるカメムシは、稲穂を食害する害虫です。防御するためには、住処にならないよう小まめな畔草刈りが必要です。このカメムシがどういった環境下で大量発生するかを聞きました。どうやら普段のカメムシは山に住んでいるらしく、山で食べ物が不足すると、平野に降りてきて「大量発生」と感じてしまうようです。その食べ物とは、ズバリ「杉の花粉」だそうです。「今年はスギ花粉で大変だ!」と人間が言っている年は、山に花粉が多いので平野のカメムシはあまり発生せず、「今年はスギ花粉が少なく快適だ」と安心していると、夏にカメムシが大量発生する、らしいです。あくまである方の個人的経験値からの話ですが、「確かに~」と思ってしまいました。皆様はどうですか。

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2019年7月23日 (火)

あぐり新聞 2019年7月号

みなさまへ

 「暑さきびしき折~」とご挨拶するべき7月が始まりました。皆様 いかがお過ごしでしょうか。先月は冒頭に「暑すぎる日々~」について書きましたが、5月末の予想と違い、今年の6月は過ごしやすい程度の暑さとなってしまいました。6月末の現在は、猛暑を想像できない状態ですが、昨年を生々しく覚えていますので、過ごしやすい夏なんて想像できません。やはり暑さに耐える夏が来たのだと思います。おそらくですが・・・

 さて、6月中に小麦の収穫が終わりました。昨年の大不作を受けての今年の収穫です。結論から言いますと、「道半ばである」としか言いようがありません。

 小麦が不作になる原因は大きくは2つあります。一つは、連作障害。小麦を作り続けることで、土壌が酸性に傾き、また微量要素が欠乏し始めます。もう一つは、圃場の湿潤。乾いた畑状態を維持できないと根腐れをおこし元気に生育できません。昨年の収穫以来、この二つについて徹底した対策をとりました。カキガラなどを全圃場に散布し、アルカリ化を促進、同時に微量要素資材も追加し、土壌の最適化を行いました。また、種まき時に掘った「排水ミゾ」が機能するように、こまめに堀り直したりもしました。その甲斐あって、全体的に見事に生育し収穫に進んできました。青天の多い1年でしたので生育は早まっていましたが、田植えと作業が重なることなく、万全の態勢で収穫を迎えたのです。

 しかし、収穫初日。聞こえてくるのは、期待を裏切るものでした。「思った以上に収穫がありません」そんな報告が多いのです。どうしたことかと圃場を見に行きました。見る限りはよく実っています。でも、コンバインからでてくるのは少量です。何かにだまされている感覚で初日を終えてみると、昨年の大不作をさらに下回る収量しかありません。これはどうしたことでしょう?

 そのまま2日目。同じような結果しか出てきません。ただ3台のコンバインが動いている中で、1台だけ「収穫がわるくない」という話しが聞こえてきました。同じような状況の刈り取りを行っているのに 結果が違うのは理由があるはずです。2日目の夜に、この件について話し合いを持ちました。まず、「穂はしっかりついているのに、どうして収量に反映しないのか」と。すると答えは、「穂が非常に短いエリアがある」という事と、「穂首が折れるものが多い」というものでした。

 では、原因は何なのか。「穂が短い」には覚えがあります。一番初期に種まきをした圃場では、生育が早く進み、追加の肥料を散布する時期が遅れてしまいました。カレンダー通りの作業日程を組んでいたのですが、生育が進んでしまい適期を逃したのです。穂がはらむ時期に栄養が不足し、穂が短くなったと考えられます。これは初期だけの症状。以後は持ち直しているので、これ以上の問題はないはずです。

「穂首が折れる」のは、どうしたわけか。これは折れやすい品種の特性もあるのですが、コンバインで揺すったくらいで、ポキポキと折れていくのはおかしい。「乾燥しすぎているのではないか?」との意見が出ました。2日前に適期と判断してからの晴天で一気に乾燥が進み、追い抜かれてしまっている。そうであるなら、2日刈り取りを早めればいい。穂首が折れやすくなる前に刈り取りを行う方向に決めました。でも、1台だけ「収穫が悪くない」結果になるのは何なのか。聞いてみると、「穂首が折れるのが分かったので、コンバインのい設定を調整し、かつスピードを緩め、ゆっくり刈り取ると改善できた」というものです。天候が崩れる前に、適期が通り過ぎないように急いで刈り取りを進めたことが裏目に出ていると思われました。3人のコンバインのオペレーターで話し合ってもらい、調整の方法と状況に応じたスピードを確認してもらいました。「これで駄目ならどうしたらいいんだ?」諦めと希望を同時に感じながら2日目を終えました。

 そして、3日目。穂首の短い圃場はすでになく、乾燥は進んでいましたが、コンバインの刈り取り方法は変更しました、すると、収量はグッと上向いたのです。4日目。乾燥具合も追いつきました。そこからは良い報告のオンパレードです。「ここは〇俵 取れています」「見たこともない収量です」「配送のトラックが間にあっていません」ここに至って初めて、期待した結果が出てきたのです。そこからは全力です。当然に休みもなく夕暮れまで、ゆっくり走るコンバインにイライラしながら、でもその他の作業はスピーディーに。以降は、朗報しか入ってきませんでした。

 歯を食いしばりながら、「何とか挽回してくれ」と祈る日々が続きました。しかし、実際には最初の3日で既に3分の1の収穫が終わっておりました。最新鋭の大型コンバインが、フルスロットルで少ない収穫を行ったということは、それだけ作業は進んでしまいます。天候が崩れる前にと急いだ作業が、やはり裏目に出ていたのです。最終的な結果は昨年を上回ったものの、期待値には大きく届きませんでした。

 「道半ばだな」と思いました。悔しいし残念だけど、今年ではゴールに届かなかった。1年間積み上げても、必ずしも結果はついてこない。これは農業の宿命です。お米なら、もう何十年も積み上げた経験や知識があり、こんなことにはならないけれど、まだ数年の作物には、通らなくてはならない苦い経験がついてまわる。それを分かったうえで、諦めずに進んで行くしかない。

 収量での結果は出なかったけれど、学ぶことの多い収穫となりました。今年 手に入れる事は多かったのだと思います。苦い実体験をもう一つ頭に入れ込んで、「次こそは何が何でも結果を出す」との心を持ち続けて頑張っていこうと思います。

                             

                                             農業生産法人 松幸農産

                                                 代表 松田丈輔

 

 お米の生育状況

 お米のほうも相当の改善策を講じてあり順調に生育しています。5月の気温が高く 育ち過ぎた感もありますが、分けつ(ぶんけつ)もしっかりして穂数も十分、あとは7月以降の天候に期待するところです。

暑すぎた昨年の夏の気配は6月中は感じないので、こちらは私たちに味方してくれるのかもしれません。でも、外的要因はさておき、今はしっかりとお米の成長に向き合っていこうと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2019年7月16日 (火)

あぐり新聞 2019年6月号

皆様へ

 「初夏の候~」と言うには、暑すぎる日々が続いております。皆様いかがお過ごしでしょうか。テレビや新聞を見ていると、「記録的な~」とか「観測史上初めて~」といった表現が増えすぎて、もはや何も感じなくなりつつあります。当たり前のように記録を更新し、当たり前のように異常気象がやってくる。そんなことも日常になってしまいました。農業だけではありませんが、過去を参考にせずどのように自然と向き合うのか。そんな難問を投げかけられているような気がします。

 さて、松幸農産では 5月中に田植えを無事に終えることができました。何とか中旬の15日くらいに終わらせたかったのですが、実際には8日遅れて23日が、田植えの最終日になりました。人手不足の面もあるのですが、今年に関しては今までになかったタイプの原因がありました。それは「水が田んぼに溜まらない」現象です。

 数多くの田んぼを作っていると、それぞれの田んぼによって特徴があることがよく分かります。主に、土質による違いで 湿田、乾田、粘土質、砂状、火山灰質など様々です。そこに更に、田んぼのある場所の水源地からの距離、地下水までの深さなどもまじるので、「全く違う」と感じるか、「似てはいるけど何かが違う」と感じることがほとんどです。その土質の特徴を踏まえて、代掻きや田植えの作業を進めるのですが、そこに今年は「乾ききった田」という要素が加わりました。小雨のために土埃が舞い上がる田んぼの状態です。

 そんな中で田植えも後半に差し掛かった頃、ある報告を受けました。「○○地区の田んぼに水が入らないので、ひとまず飛ばして別地区を進める」というものです。特に珍しいことではなく、他の農家さんの田植えのタイミングと重なると水の取り合いになるので、ひとまず地区を移動するのはよくあることです。数日ずれるだけなので問題にもしていません。ところが、何日経っても、その地区が終わったとは聞こえてきません。少し離れた地区で春作業の最後尾の草刈りをしている私は、先頭で作業する代掻きの状況はよく分かりませんでした。

 そうこうしているうちに、田植えも最終段階に入り あと数日で計算上は終わる時期になりました。それでも、その地区は水が入らないと聞こえてくるばかりです。我慢が出来ずに、自分の仕事をとりあえず置いておいてサポートに入ることにしました。すると状況はこうです。もともと台地にある乾田で火山灰土なので保水力は弱い。毎日 水を入れているが全て吸収されて、田面に水が溜まらない。ならば、溜まるまで水を入れ続けるしかないのですが、地区の取り決めで「夜間断水」になっている。夕方には地区の人が見回って、全ての水を止めてします。すると、その日に入れた水は夜間に消えてしまい、次の朝にまた一からやり直しになり、いつまでも経っても水は溜まらない。そういうことでした。雨でも降れば良いのですが、天気予報を見ても晴ればかりが並んで状況は変わりそうもありません。次の雨を待つにも これ以上遅れるとハウスの苗が枯れ始めます。

 そこで、地区の用水事務所に行きました。とにかく夜間断水だけは緩和してくれないと何も進まないと思ったからです。事務所に行くと、いかにも「役員風」な方がいます。全くフレンドリーではないのですが、努めて明るく現状を説明しました。ところが、答えは「夜間断水にしているから~」の一点張り。「面倒なことを言うな」の空気感でいっぱいです。しかし、こちらも引き下がることができない時期まできています。必死で再三状況を説明しました。すると田んぼに水がすぐに行きわたるように、「田面にミゾ堀を行うなら夜間に水を入れて良い」と条件付きながら聞き届けてもらうことができました。今更 そんな時間はないと思いつつ この条件は飲むしかありません。すぐに行うことに決めました。帰り際に、「この話でまとまったことを、水の見回りをしている担当者に伝えて下さい」と言うと、「会えば言っておくよ」と返答されます。「会えば~」では困るのですが、議論が振り出しに戻ると困るので、そのまま その場を後にしました。この時期の水不足は私も同じですが、誰も心がささくれるものだと納得するしかありませんでした。

 翌日、約束通りすべての田んぼにミゾを掘り、夜間に水を入れました。深夜と早朝にスタッフが見回りをしてくれましたが、全てに話が通じていないのか、数枚は水が止められてしまいます。それでも、朝一番でとりあえずトラクターを田んぼに入れて、水を全開ににし 更に鍬で細々と細かい溝をつけることで水を行きわたらせ、代掻きまではこぎつけました。いつもの3割程度でしか進みませんが、それでも苗が元気なうちに作業を終えられたことは幸いです。遅れながらも無事に田植えの季節を乗り切れたのですから。

 今年の「水が田んぼに溜まらない」現象は、この地区だけではなく他でもチラホラありました。それらが順番通りに進めることを阻害して作業が止まったり、移動が増えたりして、結果8日も作業が遅れました。砂漠のように乾いた田んぼになってしまうこと、これは今までにない現象です。たまたま運が悪く、そんな1年を迎えたのなら良いのですが、昨今の異常気象は次の問題も想像させるに十分なほどです。おそらく来年は来年の問題があるのでしょう。それらに対峙しつつ、増え続ける農地にどう対処するか。今後の悩みが尽きる事はありません。

 今年を乗り切れた安堵感よりも、来年の課題で頭がいっぱいになる田植えでした。

                                        農業生産法人 松幸農産

                                            代表 松田丈輔

 

”小麦の収穫が始まりました!”

 6月の松幸農産は小麦の収穫作業を田んぼと同時並行で進めていきます。例年なら田植えの2週間後に収穫ですが、今年は田植えの遅れと小麦の生育が早かったせいで、田植え後にすぐに小麦の収穫が始まってしまいました。ほぼ休みなく4月、5月と働いてきて、心も体も休まる間もなく6月も働き続けます。もう気力だけが頼りですが、みんなで力を合わせて頑張ります!

 

ゴミが・・・

 たんぼで毎日草刈りしていると、空き缶やコンビニ弁当のゴミなどが非常に多く捨てられております。「さすがに昔はこうではなかったな・・・」と思うことが何度もありました。心無い人はいるものですが、そういった方々に田んぼは どのように映っているのでしょうか。生きていくために食べることが当たり前すぎて 何も感じられなくなっているのでしょうか。泥まみれのゴミを拾うたびに全部を馬鹿にされているようで辛くなります。マナーの問題ではなく、何か勘違いしていると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2019年4月26日 (金)

あぐり新聞 2019年5月号

皆様へ

 新しい時代を迎えました。皆様いかがお過ごしでしょうか。元号が変わっても社会の何が変わるわけでもないのですが、気持ちの上では新しい時代へ入ることにワクワク感があります。これは「大きいお正月」のようなもので、過去がどうあれ、新年が来ると全部リセットされて 何となく前向きになれる、そんな心持です。

思えばお正月と同じく、稲作をしていると 田植えの時期が来れば前向きになれますし、また近くの伊勢神宮で行われる20年に一度の式年遷宮も全てを新しく作り変えることで、老いることなく若返り永遠の活力をつないでいく行事でもあります。日本人の心風景に非常にあっているのが、このリセットの繰り返しなのでしょう。新しい夜明けに向けて、歩みを揃えていく日本人の姿がそこに見て取れないでしょうか。令和の時代を心よりお祝いしたいと思います。

 さて、松幸農産では5月に入って、いよいよ田植えも後半戦です。4月中は代掻きや、田植えもスケジュールに大きな狂いはなく順調に進んできております。同時並行で行っている種まきや小麦の消毒といった作業も何とか予定通りに進んで、5月中旬ころには無事に終えることができるのではないかと思っています。こうして事実だけをお伝えすると「あぁ、順調なのね」と思われてしまいますが、実際はもう頭がおかしくなるほどの多忙を極めて、誰もが限界の線を越えて働き続けているのが現状です。「これで大丈夫か?」と、スタッフみんなを見ながら、更に自分自身を見ながら感じている田植えです。

 今年の田植えは当初から問題がありました。それは単純に人手不足だからです。例年の田植えは、何度かご説明させて頂きましたが それぞれに担当が決まっていて自ら役割をしっかりこなして出来上がっていくものです。ただ今年は、その1か所に「穴」が開いてしまいました。穴が開いた仕事は田植え機の手元作業員(通称:手元さん)です。

 トラクターや田植え機の仕事は通常の正規スタッフで行います。苗の管理といった仕事も同様です。一方、畔の草刈りや手元作業は農繫期に手伝いに来てくれるスタッフさん頼りになっています。みなさん65歳を超えた方々で松幸農産にとって大切な戦力です。その手元をお願いする予定の方が、半分程度の日数しか来れなくなってしまいました。理由は少し前に親戚が脳こうそくで倒れて、その方の田んぼの面倒を自分が見なくてはならなくなったから。身内のことなので仕方がないとしか言いようがありません。

 田植え作業は、田植え機の作業者と苗や肥料を運んで手渡す手元さんで1組の作業です。高性能の機械があって、若い作業者がいてもシニアの手元さんが一人いないと進まないのです。ならば他の作業から一人来てもらえれば良さそうなものですが、他の人は全員すでに役割があって(主に田植え後の管理)、こちらも穴をあけることができません。かといって、田植え機が2台中の1台が止まれば作業は半分しか進みません。とにかく進み続けるしかないのです。仕方がないので、その日に少し余裕がありそうな人を捕まえては「今日は〇〇さん」、「明日は〇〇さん」みたいな感じで作業を担当してもらいました。その開いた穴には「△△君、何とかカバーして!」「無理は承知で何とかして!」と、誰かに負担がのしかかります。そんな状態が何日も続き、「このままで大丈夫か? と心配しながわも進めて行くのが精いっぱいでした。

 さすがにこのままでは、誰もが事故なり体を壊しかねないと判断して、「数日の遅れは仕方がないもの」として担当する役割を見直しました。当初思っていたスケジュールや進め方とは違いますが、それが最善だと思ったのです。田植えの遅れと同時に 草刈り作業の進捗もあきらめるしかありませんでした。5月中旬に田植えが終わったら、おそらく元気に育ちきった雑草の草刈りに忙殺されるはずです。何を優先するかを考えればこれもまた仕方がないことだと納得するしかありません。

 たった一人で困るくらいなら、あらかじめ余剰人員を何故雇わないのだと思われるでしょう。ですが、昨今の人手不足は農業の世界でも深刻で 何度も求人広告を出しても電話一本鳴らないことがほとんどです。「週に1日でも良いから・・・」と、田んぼを貸してく下さる地主さんにも応援の要請をしましたが残念ながら応募はありませんでした。二人新たにスタッフは増えましたが新戦力だし農地が増えているので十分ではありませんでした。

 そんなバタつく田植えですが、一度始まってしまったら止まることはできません。どういう状態であれ進めて行くしかないのです。ぼろぼろの体とそれを支える精神力。今年は天候がどうこう言うこともなく全力で進めて行く田植えです。新しい時代が始まって、幸せ一杯とは なかなかいきませんが、もっと苦しい過去もありましたので素晴らしい実りであることを期待して、思いも新たに頑張っていきます。秋には笑顔になれるように、今は苦労を乗り越えて見せます。

                                    農業生産法人 松幸農産

                                        代表 松田丈輔

 天皇陛下のご来勢

 天皇陛下が最後の地方訪問として地元の伊勢神宮に来られました。さすがに農繫期なので下車駅や神宮前に行くことはできませんが、電車の線路は田んぼのすぐ横にあります。「作業中に専用列車に出くわさないかな?」そんな期待を抱いていましたが、残念ながら願いは叶いませんでした。夜のニュースで車内からずっと手を振って下さっていたようですね。もしかしたら、大汗をかきながら草刈りをしていた私の背中に気づいてくれたでしょうか?

 小麦について

 生育が異常に早かった今年の小麦。「収穫が4月末になるのでは?」と田植え作業と同時になる心配をしましたが、4月に寒い日もあったりして、だんだん落ち着いてきました。

例年よりは早まるとは思いますが、おおよその時期に変化はなさそうです。思えば、猛暑の年でも稲の収穫が早まるわけではありません。季節季節がきちんとくることを少し不思議に感じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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2019年4月 9日 (火)

あぐり新聞 2019年4月号

 皆様へ

 春の日差しが非常に心地よく感じます。皆様いかがお過ごしでしょうか。暖かかった冬の日に、「春のようだ・・・」と感じておりましたが、本当の春を実感する季節になると やはりその気持ちの晴れやかさは冬とは全く違うものです。何ともいえず瑞々しく、命の芽生える季節に心がおどるような明るさがあります。新年度、新学期、入学入社など新しいスタートをこの時期にきるのは日本人にとって必然なのでしょうね。

 松幸農産では、3月時点で田植えの準備が整いました。ビニールハウスにびっしりと並べられた苗も順調に生育し、4月中旬からの田植えを静かに待っています。農業機械も整備が終わりドライバーも決まって、いつでもスタートが切れる状態です。晴れの日が多かったおかげで、例年なら田植えと同時進行になっていた細々とした作業も全て終えることができました。後は天気、そして気力。全力を出し切るこの季節に休みなんてありません。前しか見えない平成最後の春。今年も田植えの季節がやってきました!

 さて、今年の田植えがいよいよ始まりますが、私としては非常に感慨深いものがあります。6年前に苦悩の末に転作作物として小麦の作付けを始めましたが、これは当時の転作を行わない生産者を切り捨てる政策が大きな原因でした。農業を続けていくために、切り捨てられるわけにもいきませんので、全体の40%程度を小麦に切り替えてきたのです。それ以降、全体の耕作面積は増え続けてきましたが、転作比率を守る必要もあり、米の作付面積は小麦の生産が始まる前より少ないままでした。それが、今年についに小麦前の面積を上回るまでに復活したのです。

 今までですと、「大変だ、大変だ」と言いながらも、心の中でこう思っていました。「大変だけど、前はもっと作っていたな」と。小麦を含めた耕作面積は増えているのですが、「あの時の苦労を思えば、まだ大丈夫だ」と楽観していたのです。松幸農産は、米の生産者であると心のどこかに持ち続けているので、米の作付けが前より少ない限りは、何ら問題なく耕作を続けていけると思うことができました。実際 新しいスタッフが入ってきても、過去の苦労を語ったりして、「あの時は、大変な苦労だった」「でも、あの面積を乗り越えてきた」「だから、今の程度は何とでもなる」というロジックで安心させたりもしていたくらいです。

また、土壌改良を勧めたり管理を厳格にしたりと多くの改善を行ってきましたが、それを行えると考える基礎となったのが、「前より作付面積が減ったから」でした。「大変ですね。大丈夫ですか?」と聞かれても自信満々に「大丈夫です!」と答えられる。「(だって前はもっと作っていたからね)」と心の中では考えていたのです。

 それをついに超えることになりました。「今年の田植えは大丈夫なのか?」と今では自分たちに問いかける状態です。実際に以前を超える面積は5%程度ですので、できないはずはありません。それでも 草刈りスタッフの不足、古くなりつつある農業機械、天候の不順に、農業を取り巻く環境の変化。「できる」自身はあるのに、どこかに「できなかった」結果となる不安もあります。それは今年だけではなく、来年も再来年も耕作者のいなくなった農地を借り受けるたびに続くのでしょう。「できるようになる!」と、言い聞かせ続けていくしかありません。平成最後の田植えと、令和元年産の収穫が来る今年に 過去を越えて新たな段階に入っていくことが重なるとは偶然って面白いなと思います。今は二つの意味で「春」なのです。

 今年も4月12日から全力の田植えが始まります。何百という田んぼで、一つ一つ着実に田植えをしていって、5月15日にぴったりと作業を終える予定です。生育が早まった小麦の収穫が、5月20日頃にスタートし こちらも梅雨が始まるまでに全部の収穫を終えるつもりです。しかも事故なく、喧嘩もなく柔軟に対応して助け合って。最高の形で松幸農産らしいスタートを切りたい。神様も 人様も 天候も 環境も そんな私たちを温かく見守ってくれるでしょうか。すべてを乗り越えて、素晴らしい秋の収穫を迎えられることを願っています。始め良ければ、きっと次も良くなりますものね。

 

                                農業生産法人 松幸農産

                                    代表 松田丈輔

 

 田んぼの雑草が増えています

 暖かい日が続き、きれいに田起こしをしてあった田面に雑草が生え始めました。これはこれで仕方のないことですが、田植えの後まで雑草が残っていると 苗の養分を吸い取って困ったことになります。

そうならないために、トラクターできれいに「代かき」を行って、雑草を全て土中に入れ込まなくてはなりません。対応可能なことですが、丁寧に作業するだけ少しずつ作業が遅れていきます。例年より雑草が早く育ちそうですので、これも一つの不確定要素です。遅れが積み重ならなければ良いのですが・・・

 ハトに困っています

 農業用の倉庫の高さは8mあります。その倉庫にハトが入るようになりました。何とか追い出そうとするのですが、天井までが高すぎてどうすることもできません。しかし、先日 農機具用の小屋(高さ2m)になぜかそのハトが入っていたので、虫網で捕まえることができました。ただ捕まえたは良いものの、処分するのはかわいそうだし、飼育するつもりもありません。「で、どうするの?」と考えこんでしまいました。仕方がないので隣町へ連れて行ってそこで空に放ちました。帰巣本能があるのでそれでは帰ってきてしまいそうですが、できれば新天地を見つけてほしいものです。

 GWの10連休について

 ゴールデンウイークは、田植えの最盛期ですので農業現場に休みはありません。一方、事務所はカレンダー通りの休みを取っております。でも少し長すぎる休みでは、いろいろと問題も生じます。そこで、4月30日(火)と5月1日(水)は営業することと致しました。GW後半も休みが長いので、この2日間にご連絡頂けると助かります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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あぐり新聞 2019年3月号

みなさまへ

 皆様いかがお過ごしでしょうか。暖かい2月でしたね。例年ならこの3月に春の訪れを感じるところ、いつまでが冬でいつからが春か分からないままに日が過ぎて、いつの間にか春を感じるまでになってしまいました。あたりを見回すと田んぼんの畔には雑草が芽を出し、緑色のラインがたくさん見えます。しばらく田起こしをしていない田面にも雑草が生え始め、見た感じは4月の中旬のようになっています。季節感のない状況には違和感しかありませんが、季節は確実に進んでいるものと納得するようにしています。

 そんな中でも松幸農産では、4月の田植えの準備に追われています。ビニールハウスの事前準備、苗箱の消毒、育苗ラインの準備など大きなことから小さな準備まで数えればキリがないほどです。でも、これらの準備がいかに緻密にできているかで春の段取りが大きく変わります。一つ一つを確認していき、万全の態勢で4月を迎えたいと思っています。

 さて、雨が少なく暖かかった今年の冬。今になって心配の種になりました。春の田植えのことではありません。現在、生育中の小麦についてです。農業制度が大きく変更された5年前より 転作作物として小麦を作っています、全体面積の30%程度でかなり大規模に作付けを行っています。設備や人員の問題で完全に年間の作付け計画に組み込まれていて、今や なくてはならない存在になりました。小麦は稲刈りが終わった11月~12月の2カ月間に種まきをするのですが、雨が降らなかった今回は11月中旬に全て終えてしまいました。完全な適期での種まきであり、また雨も少なかった影響で湿害もなく、これ以上なく順調に来ていると思っていました。これがどうも怪しい。

 気温が暖かかった今年の冬。生育は順調なのですが、寒さによって成長が一休みすることがありません。そのままスクスクと成長し、3月初めには4月頃の姿にまで成長しているように見えます。あまりに成長が早いので途中で肥料切れを起こして薄緑に葉色が落ち込み、大急ぎで追加で肥料をあげるほどでした。このまま生育が進んでしまうと大変な状態になります。

 何が困るかと言うと、収穫時期が早まってしまうことです。ご存知方も多いかと思いますが、松幸農産の田植えは4月中旬~5月中旬の1カ月です。田植え後は適正に生育できるレールに乗せる期間で、それが過ぎて6月に入るとすぐに小麦の刈り取りが始まります。もし仮に、1カ月生育が早くて、5月に入ってすぐに小麦の収穫適期が来ればどうなるでしょう。完全に田植えの最盛期と小麦の収穫期が重なってしまいます。 

 ただでさえ人員も機械もいっぱいいっぱいで作業しているのに、ここに小麦の収穫まで重なったら もう対処のしようがありません。小麦の収穫を優先し田植えを後ろにズラせれば、苗が待ってくれないし、また米の収穫時期になって水がなくロクな収穫ができません。逆に田植えを優先して収穫を後ろにずらそうにも、適期を過ぎれば小麦の実が地面に落ちてしまって そもそも収穫自体が意味のないものになってしまいます。可能かどうかは別として、「米の田植え」と「小麦の収穫」を同時に行うしか方法がないのです。「そんなことが実際にできるのだろうか?」考えても答えはなくその時の「瞬間の判断」が必要になることでしょう。

 実は、今まで天候に左右されて心配は多かったのですが、本当に壊滅的な被害を受けたことはありません。30年以上作っている米に関しては、収穫や品質の増減はありますが、収穫できないことはありませんでした。他の野菜などのように、「天候で全滅」にはならないのです。非常に日本の風土に合い、安定的に収穫できるのが米の良さでもあります。

 一方、小麦はどうしても湿害を始めとする被害は容易に想像できる畑作物で 今までも全滅した年(松幸農産が小麦を作る以前です)を見てきました。想像するに小麦を優先するしかないのかもしれません。

 天候が良くて、生育が順調で崖っぷちに立たされることなど想像もしていませんでした。宿命とはいえ、何も考えずに我慢だけするほどの心の整理がつくこともありません。ただ、嘆いてばかりいても事態が好転することもないので、前向きに考えるようにしています。これから年十年も農業を続けるについては、いつかこんな状況に悩むことになる、それが少し早く来た。しかも自分がまだ踏ん張れる年齢と気力があるときに来たのです。一つの経験を積んで、悩み苦しんで乗り越えた先には、一つ成長した松幸農産になるのでしょう。春を目の前にして立ち止まることはできません。

                                      農業生産法人 松幸農産

                                          代表 松田丈輔

 

* できることは限られていますが、大目に種もみを準備して、万一苗が駄目になっても すぐに作り直せるようにはしました。受け入れる乾燥調製センターの機会も前倒しで若干増設しています。スタートの号砲が鳴るまでに、考えうる準備だけは抜かりがないつもりです。

GWの10連休

 天皇陛下のご退位、ご即位によりゴールデンウイークは10連休となりますね。時代が移り変わる非常に良い機会ですので、休日になることは喜ばしいことです。一方で松幸農産では田植えの真っ最中となるので、テレビで放送されるであろう式典、その他の諸行事をオンタイムで見ることはできません。せめてラジオを聴きながら想像を膨らませつつお祝いの気持ちになれればと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

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